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肩の病気 (紀南病院 整形外科部長 簗瀬能三) 2008年9月掲載
肩関節の構造
肩関節は上腕骨頭と肩甲骨臼蓋で構成され、球状の骨頭が皿状の臼蓋の表面をすべるように動くため、非常に広い範囲の運動が可能となっています。しかし、骨頭と臼蓋の結合が緩いため、不安定でもあり、脱臼しやすい関節でもあります。この骨頭と臼蓋は、関節唇と呼ばれる軟骨、関節包、靭帯、腱などが補強します。
(図1:肩の関節)
関節鏡視下手術
肩関節は厚い筋肉の奥にある関節や滑液包に病変が発生している事が多いため、関節鏡を用いた診断、手術が非常に有効である。約5ミリの皮膚切開を何カ所かに開け、4ミリの内視鏡を挿入し、モニターに拡大して病変部を詳細に観察できます。また、関節鏡視下手術では、正常組織を殆ど損傷せずに、低侵襲に病変の修復が可能で、術後の疼痛の軽減、術後の可動域制限(拘縮)の軽減に有効で、早期リハビリテーション、早期退院が可能となります。当科では、骨折や人工関節置換術以外の肩関節疾患の手術は殆ど関節鏡視下で行っています。
(図2:関節鏡視下手術)
肩の代表的疾患
腱板断裂
上腕骨頭の周りには腱板と呼ばれる筋肉の腱(肩甲骨と上腕骨をつなぐ筋肉の腱)が取り囲んで付着しております。
(図3:腱板)
腱板の働きは、上腕骨頭を臼蓋に押し付け、肩を挙げるときに働いています。従って、この腱の断裂が原因ですから、自然に腱板断裂を起こした腱がくっ付いて治癒する事はありません。
(図4:腱板断裂)
年齢は50歳以降に発症する事が多いです。転倒して打撲した、重量物を持ち上げてからなど、外傷をきっかけに発症する事が多いですが、外傷と関係なく発生する(腱板の変性が原因)の場合もあります。症状として、手を挙げる時の痛み(運動時の痛み)に加えて夜間痛(痛みで眼が醒める)が挙げられます。炎症がひどくなれば、筋力低下や拘縮(関節の動きの制限)がおこります。これらの症状は五十肩と非常に似ている為、実際は腱板断裂を起こしているのに、いつかは治ると信じて手遅れになる事もありますので、「五十肩が何ヶ月も治らない」なら専門医の診察を受ける事を勧めます。腱板断裂を疑う症状(五十肩との違い)は、外傷をきっかけに痛みが発症した場合や、軋轢音(腕を挙げる時、ゴリゴリと音がする)、何かの動作で痛みが走るなどが挙げられます。物を持ち上げる力が落ちる、挙上位での作業で疲れてだるくなるなどの症状が何ヶ月も続くときは要注意です。治療は、注射などで炎症を抑え、痛みを和らげ、筋力トレーニングで残存する腱板筋を鍛える事で大部分の方は症状が和らぎますが、一部の方には手術を必要とする事もあります。万が一、手術が必要になっても、手術は関節鏡を用いる事で、極めて小さい切開創で可能となり、術後疼痛の軽減、早期リハビリ、早期社会復帰が可能となっています。関節鏡視下腱板修復術では、アンカーと呼ばれる糸の付いたチタン製のネジを上腕骨の骨に入れ、その糸を腱板に通し、骨に縫い付けます。
(図5:腱板、修復前)
(図6:腱板、修復中)
(図7:腱板、修復後)
反復性肩関節脱臼
スポーツや交通事故などの外傷によって、肩関節の脱臼を発症し、肩の靭帯がはがれて弛み、肩の制動が効かなくなり、脱臼が癖になった状態で、スポーツ時や日常生活動作で、容易に脱臼を繰り返す状態。リハビリで、筋力を鍛えても、脱臼を完全に抑える事は不可能で、脱臼を繰り返す場合は、軟骨や腱を傷めない内に手術が必要となる。手術は、従来は切開手術が中心であったが、正常組織を切開する事による術後の可動域制限(拘縮)のため、スポーツ復帰には不利である。肩関節鏡視下手術では、正常組織の損傷が殆ど無く、靭帯の損傷部の修復が可能で、術後の可動域制限(拘縮)も少ない利点がある。術後の再脱臼率も、関節鏡視下手術器械、技術の進歩で、切開手術に引け目をとらないようになっている。当科でも、基本的には関節鏡視下手術を行っている。スーチャーアンカーと言う糸のついた釘を骨に入れて、その糸で剥がれた靭帯を骨に縫い付けます。
(図8:脱臼、修復前)
(図9:脱臼、修復後)
肩関節拘縮
五十肩は加齢変化による腱や関節包の変性が原因の炎症により、疼痛(夜間痛と言って、睡眠中に痛みで眼が醒める)や可動域制限(拘縮)が起こる病気で、50歳頃に好発します。痛みの強い時期、拘縮を起こす時期を経て、約数ヶ月から長くても1年で大部分の人の症状は治ってしまいます。適切な治療を行えば、理学療法などで改善し、手術を必要とする事は殆どありません。しかし、糖尿病の合併している場合は、難治性の場合もあり、関節鏡視下受動術(関節包の切離)が必要な場合もあります。
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